以前以下の記事で各自治体における「フリースクール利用料」の助成
(利用者=不登校の子どもを持つ保護者に対する助成)について取り上げましたが、
今回はフリースクールの開設・運営側への助成について、
各自治体の取り組みを確認していきたいと思います。
フリースクール開設、運営における公的補助金・助成金について
まず、フリースクール開設、運営について、国からの補助(補助金・助成金)は現在はありません。
その背景としては、
・フリースクールの明確な定義が存在しない
・運営形態(個人・社団法人・NPO法人)が極めて多様
・学習指導体制、学校との連携の在り方も組織によって異なる
等があげられ、これらの理由から財政支援を行うにあたっては
上記整理が必要であると考えられています。
補助金は「こうしなきゃいけない」と決められたお金、助成金は「いいことに使ってね」と言われるもっと自由なお金、という感じ!らしいです。
全国の自治体による フリースクール開設、運営についての補助金一覧
国からの支援はありませんが、各自治体毎に行っているものはありますのでそちらをまとめます。
都道府県 | 内容・補助金・助成金 | 金額/年間 | 開始時期 |
北海道(札幌市) | 札幌市フリースクール等民間施設事業費補助金 施設の設置者に対し、児童生徒の指導体制の整備、教材や体験学習等に係る経費の一部を助成 | 児童生徒数に応じて 160万円〜320万円 | 2012年度〜 |
茨城県 | フリースクール連携推進事業(フリースクールに対する運営費補助・授業料等補助) | ・補助率:2分の1 ・限度額:100万円 | 2021年度〜 |
群馬県 | フリースクール等支援事業補助金 ・事業費補助を実施 ・県教育委員会で任用した専門的人材をフリースクール等に派遣し、経営・施設運営等の助言など、経営基盤強化のための支援を行う | ◉基本枠 ・補助率:2分の1 ・限度額:100万円 ◉上乗せ支援枠 ・補助率:2分の1 ・限度額:300万円 | |
千葉県 | フリースクール等民間施設事業費補助金交付 ・教材及び教具の整備に係る経費 ・体験学習等の実施に直接要する経費 ・児童生徒の相談や指導のために必要 となる施設の借上料 | ・補助限度額:50万円 | |
長野県 | 信州型フリースクール認証制度 ・県内のフリースクール等民間施設を認証し、財政支援等を実施 (認証は3年間有効) | ◉居場所支援型 ・補助率:2分の1 ・限度額:48~60万円 ◉学び支援型 ・補助率:2分の1 ・限度額:140~200万円 | 2024年度4月〜 |
大阪府 | 大阪市市民活動推進助成事業 ※市民活動推進事業運営会議による審査内容を基に選定されるもので、令和5年度に「フリースクール事業」が選定された | ・補助額:100万円 | |
鳥取県 | 鳥取県フリースクール連携推進事業補助金 ・フリースクールを運営する事業者に対し必要な経費を助成することにより、児童生徒の学校復帰や社会的自立の促進を図ることを目的として交付 | ・補助率:2分の1 ・限度額:400万円 | 2014年度〜 |
福岡県 | 福岡県フリースクール支援事業補助金 ・フリースクールの安定的かつ持続的な運営及び活動を支援することで、施設を利用する児童生徒の学校復帰や社会的自立に資することを目的として工夫 | ・補助率:2分の1 ・限度額:200万円 |
フリースクール開設、運営が対象となる財団
各自治体で、フリースクールを補助する財団を紹介しているページもありましたので、そちらは以下に記載します。
都道府県 | 内容・補助金・助成金 | 金額/年間 |
青森県(青森市) | 児童・少年の健全育成助成「物品助成」 【公益財団法人日本生命財団】(外部サイトへリンク) ・物品購入資金助成 | 30万円~60万円 |
宮城県 | ニッセイ財団「児童・少年の健全育成助成」 ・物品購入資金助成 | 30万円~60万円 |
静岡県 | ニッセイ財団「児童・少年の健全育成助成」 ・物品購入資金助成 | 30万円~60万円 |
和歌山県 | ニッセイ財団「児童・少年の健全育成助成」 ・物品購入資金助成 | |
愛媛県 | 子どもの愛顔応援ファンド フリースクール連携推進事業 ・教育活動等に要する経費の一部の助成 | |
宮崎県 | ニッセイ財団「児童・少年の健全育成助成」 ・物品購入資金助成 | 30万円~60万円 |
補足:市町村の一般財源によるフリースクール運営について
奈良県の奈良市・上牧町・河合町では、
フリースクールの設立・運営等、学校以外の多様な学びの場づくりにかかる費用については、
すべて市町の一般財源で対応しているようです。
しかし、人口減少等による財政状況の悪化が予測されるなかで今後継続的に支援を行うことが難しく、
国に対して「財政支援措置」と「支援スタッフの配置に係る補助制度の対象拡大(現在は、”学校教育活動の一環”であることが条件となっているが、”居場所づくりの一環”まで範囲に含める希望)を要望しています。
参考:奈良県「公設フリースクール等多様な学びの場づくりに係る財政支援について」
「フリースクール事業者に対する補助金・助成金」 まとめ
現在子ども一人一人にあった多様な居場所、学びの場が必要とされているなかで、
フリースクール事業者に対する支援はどの程度されているのかを調べました。
不登校特例校については、施設、財源、人材の観点から設置ハードルが高いことが指摘されており、居場場所、学びの場の充実の観点からは、今後フリースクールといった民間企業との連携が必要となってくるかと思います。
しかし、フリースクールは前述したように、
運営形態や指導体制も様々で、国の財源を利用するにはまだ整備が不十分であることも理解できます。
その中で、実績があり信頼に足る組織であるかを県独自の認証条件を設定し、認定することで財政支援等を実施しているという長野県の事例は大変勉強になりました。
また、財政支援とは別の切り口になりますが、
上記フローを用いることで、自治体でもどのようなフリースクールが存在しているのかを把握することができれば、学校と連携し、子どもにあった居場所を接続することにも繋げていくことができるように思います。
限られた財源、人、場所の中で支援を考えていく際には国、自治体、そして民間の連携が不可欠になるかと思いますので、連携事例や情報についてはしっかりとアンテナを立てて、把握していきたいです。