【教育・不登校ニュース】不登校要因調査 文部科学省が見直しを発表

教育・不登校ニュース
不登校・教育に関連するニュースを取り上げていきます。

 

2024年3月26日(火)に

文部科学省が「問題行動・不登校調査の手法を見直す方針」を発表し、ニュースとなりました。

本記事ではその背景、ポイントについて順を追ってご説明いたします。

 

文部科学省による「問題行動・不登校調査」とは?

文部科学省では、児童生徒の問題行動・不登校生徒指導の改善に向けた実態把握の方法として、
毎年「問題行動・不登校調査」を行なっておりました。

正式名は、「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」になります。

調査概要

❶調査目的
児童生徒の問題行動等について、事態を把握し、指導の充実を図る

❷調査項目
暴力行為・いじめ・出席停止・小中学校の長期欠席(不登校等)・ 高等学校の長期欠席(不登校等)・高等学校中途退学等・自殺・教育相談対象

❸調査対象
国公私立小・中・高等学校、および、都道府県・市町村教育委員会
(項目によって異なる)

参考:文部科学省HP「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」

平成23年度から毎年実施している調査となります。
今まで不登校の要因については、この調査をもとに語られることが多かったです。

 

なぜ「問題行動・不登校調査」を見直すことになったのか?

3月26日に、2023年度に文部科学省の委託を受けた
公益社団法人「子どもの発達科学研究所」が実施した不登校の実態調査の結果が発表されました。

その結果、教師の回答と本人・保護者回答内容に大きな乖離が明らかになり、
従来教師の認識に基づいて行われていた文部科学省の実態調査の手法を見直す運びとなりました。

 

以下、順を追ってご説明します。
「子どもの発達科学研究所」が実施した不登校の実態調査の概要
・調査によって明らかになった教師、児童生徒、保護者間の認識の差異
・調査結果をうけて、見直しが必要になった背景
・見直す内容の詳細

 

「子どもの発達科学研究所」が実施した不登校の実態調査

概要は以下となります。

調査概要

❶調査目的

  1. 不登校の児童生徒に関する教師回答、本人回答、保護者回答の三者間比較を行い、回答の傾向を把握する
  2. 令和4年度問題行動等調査において、不登校の主たる要因が「無気力・不安」であると報告された児童生徒の詳細を把握し実態をつかむ
  3. 令和4年度問題行動等調査において、学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていないと報告された児童生徒の実態等を把握する。また相談・指導の有無にかかわらず、不登校の児童生徒本人や保護者のニーズについて把握する

❷調査項目
不登校の関連要因、「無気力・不安」群の詳細、 学校内外の専門機関等で相談・指導等を受けていないと報告された児童生徒の実態

❸調査対象
①児童生徒、②保護者、③担任教師等

参考:文部科学省委託事業 不登校の要因分析に関する調査研究

 

不登校の実態調査の結果については、
以下の記事で要約しておりますので詳細はこちらをご覧ください。

 

教師、児童生徒・保護者間ではどんな結果の差分があったのか?

不登校のきっかけ要因について、児童生徒・保護者と教師の認識には様々な差分がありましたが、
特に差異が大きかった項目は以下です。

 児童生徒・保護者教師
心身の不調「体調不良の訴え」
「不安・抑うつの訴え」
「居眠り、朝起きれない、夜眠れない」
約7〜8割2割弱
学校内
トラブル
「いじめ被害」約2〜3割1割未満(4.2%)
「教職員への反抗・反発」3〜4割強
1割未満(3.5%)
「教職員からの叱責」約1.5〜2割1割未満(2.0%)

文部科学省の調査では、不登校の要因として「本人の無気力、不安」が最も多いとされてきました(小学校:50.9%、中学校:52.2%)。
しかし上記結果から、その背景には今まで見落とされてきた児童生徒の心身の不調や学校内トラブルなど、児童生徒の苦しさが存在していそうです。
※不登校の実態調査の目的の2つ目である「無気力・不安」群の実態把握について、その背景は明らかにはなっておりませんが・・・。

 

 

結果をうけて、なぜ見直しが必要になったのか?

上記の結果をうけて、従来の文部科学省の調査で着目されていることが、調査方法についてです。

文部科学省の調査対象は「国公私立小・中・高等学校、および、都道府県・市町村教育委員会」つまり、教師による回答でした。

簡単な言葉にすると、
「児童生徒が不登校に陥った要因を教師が想定し、回答する」という方法をとっていました。

今回、「子どもの発達科学研究所」による不登校の実態調査結果において、
教師、児童生徒本人、保護者回答の三者間比較をしたことで、
教師と児童生徒本人、保護者では認識が異なることが明らかになりました。
その結果、従来の学校(教師)の認識による回答方法の見直しが必要だと判断した経緯になります。

 

児童生徒本人・保護者でも把握が難しい不登校の要因を、日常的に35人を対象にしている教師が適切に把握することは、想像するだけで難しそうです。

 

「問題行動・不登校調査」をどのように見直すのか?

「問題行動・不登校調査」について、調査方法、調査対象を以下のように見直すことが発表されております。
従来見直し後
調査方法学校側の認識に基づき不登校の要因と考えられるものを1つ選択する方法

例)「いじめ」「無気力、不安」

 

不登校の背景にある事実をもとに
複数回答で答える方法

例)「いじめの相談があった」「宿題の未提出がみられた」「不安・抑うつの相談があった」等

調査対象教師教師
※児童や生徒本人、それに保護者やスクールカウンセラーへの確認を推奨

対象自体を児童生徒、本人にすることは難しいですが、なるべく教師の主観的な回答にならないよう、事実をもとにした回答を促す方法に変更したという解釈になるかと思います。

文部科学省が調査の見直しついて まとめ

実態把握調査の方法を改善していくことは、今後の不登校児童生徒の適切な支援の為に必要であると共に、その前段階として不登校児童生徒を理解すること、心身ともに守ることにつながるように感じます。

特に、今回明らかになった「不登校児童生徒の心身の不調」や「いじめ」「教職員からの叱責」等は適切に認識しなければ、児童生徒を守るどころか追い詰めることになりかねないと考えられます。

背景に上記のような苦しみがあるにも関わらず、本人がただ「無気力・不安」だと判断されることはとても辛いことではないでしょうか。

 

一方で、実態を把握するだけではなく支援に繋げていく為には、「子どもの発達科学研究所」による不登校の実態調査の中で補助的に行われた「不登校児童生徒、保護者のニーズ」も把握することが重要であるでしょう。

つきましては、次回は「不登校児童生徒、保護者のニーズ」についてまとめられればと思います。

少しでもみなさまの理解促進に寄与できますように・・・。