本ブログでは、都知事候補・安野たかひろさんの提出したマニフェストの中から、
「教育や不登校分野」についての提言を抜粋してご紹介いたします。
きっかけは、Xで見かけた安野たかひろさんのマニフェストをクリックしたことでした。その結果、その内容の膨大さに驚き、ちゃんと読み込んでみたいと思いました!
マニフェストは全93ページにわたり、上記分野についても具体的な課題と対策が述べられていることから、教育・不登校という事象に対して、どのように対処するかについての理解を深めるための一助にしたいと考えております。
※この記事は政治的な主張を行うことを意図したものではありません。
※ご覧いただいた皆様には、政治的な背景を超え、教育という視点からこの情報をご評価いただければと思います。具体的な参考情報が必要な方は、マニフェストの該当箇所をご覧ください!
安野たかひろさんのプロフィール
1990年生まれの33歳。起業家・SF作家・AIエンジニアという異色の経歴活かし、
「テクノロジーで誰も取り残さない東京」をビジョンに都知事選に出馬されました。
・学歴:開成中学校・高等学校卒業→東京大学工学部(松尾研)卒業
・職歴:ボストン・コンサルティング・グループ→スタートアップ2社起業→SF作家
安野たかひろさんの”参加型”マニフェスト
全貌は全93ページに渡る、PDFの資料をご覧ください。
まず、この膨大で詳細な政策をどのように作られたかというと、
研究者、エンジニア、コンサルタント、教員、医療従事者など、100人以上の専門家の皆様のご協力をいただきました。(詳細版 p.4)
と記載があります。
実際私も内容を拝見し、実際の現場の知見をもとにした政策のように感じられた為、
今回は「学校教育・不登校支援のこれからを考える」という意図に沿って、
マニフェストの中から「教育・不登校」の該当箇所を抜粋してお伝えいたします。
世界一の子育て・教育環境 全体概要
未来世代に向けた政策としては、大きく以下4つのゴールが掲げられています。
- 子育てのインフラ整備
- 幼児教育・小学校の放課後を効率よく、豊かに
- 個性に応じた多様な教育
- 世界トップ大学の誘致
※P.41以降「出産〜大学卒業まで」の段階毎に、課題、テーマ、具体施策までまとめられております。
個性に応じた多様な教育
本ブログでは特に「不登校」への関連性が高い、中学・高校期間の「個性に応じた多様な教育」の箇所を抜粋します。
現状認識
まず、「1人ひとりに合わせた学びへのアクセス」が課題であると考える背景が以下です。
- 多様な学びの選択肢へのニーズは広がっているが親の負担や情報不足から十分にリーチしていない
- STEAMへの就職・進路にはいまだにジェンダーバイアスが強く働いている
- 教員の働き方改革とリスキリングを並行して進める必要
「不登校児童数が30万人に迫る」ことから、公教育の学びにあっていないお子さんが増えてきているが、一方で親の負担や情報不足から「多様な学びにリーチできていない」ことが述べられています。
マニフェスト:具体施策
上記現状を打開する為の施策が「学校内外の多様な学びの場の支援」と「教員の働き方改革とリスキリングの促進」です。
マニフェスト:詳細
①「学校内外の多様な学びの場の支援」については、
多様な学びへのアクセスを広めるために、構造・仕組み・内容・コンテンツを再考します。
②「教員の働き方改革とリスキリングの促進」については、
公務DX・リスキリング・教師採用試験のアップデートを行います。
ここまでが、「世界一の子育て・教育環境」のなかの「個性に応じた多様な教育」についての施策になります。
安野たかひろさんのマニフェストについて考える
さて、ここから「不登校」に関連する部分を私の知識と合わせて解釈していきたいと思います。
大前提として、安野たかひろさんのマニフェストは「不登校対策」ではなく、東京都の「教育全体」にアプローチするものであるので、文科省の「不登校対策」とは視野が違う点は認識しておく必要があります。
一方で、教育全体を視野に入れた最適な施策について学ぶことで、「不登校対策」という一部分に対する示唆も得られると私は考えている為、ここでは現状の「不登校対策」と比較しつつ解釈をする、という方法を取りたいと思います。
「学校内外の多様な学びの場の支援」について
不登校対応として文部科学省が2023年3月に提唱したのが
「COCOLOプラン 誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」になります。
COCOLOプランでは対策として3本柱が掲げられており、その1番目に記載されているのが
「不登校の児童生徒全ての学びの場を確保し、学びたいと思った時に学べる環境を整えます。」
=学校内外の多様な学びの場の支援に関する提言になります。
つまり、中学・高校の教育に関する安野たかひろさんのマニフェストの大枠の方向性である「学校内外の多様な学びの支援」は文部科学省の方針と同様であることがわかります。
COCOLOプランについては、以下記事で説明しておりますのでご覧ください。
「学校内外の多様な学びの場の支援」の具体施策について
ここから、安野たかひろさん独自の支援の視点について言及します。
上記の具体施策再掲になりますが、
- ジェンダーに関わらず学びたいことを学べるようになるための支援
- STEAM教育を根幹に添えた学校を公立の中高一貫校として設置
- 一部は「学びの多様化校」として設置して、より幅広いニーズに対応する
- 学校外の学びを検索できるプラットフォームを作る
私が持っている文科省をはじめとする不登校支援と比較した際、以下項目に独自性を感じました。
- ジェンダーに関して言及している点
- “多様な学びの場”自体の幅を広げる点
- 学校外の学びに繋げる為に、プラットフォームを作るというアプローチを取る点
上記のなかから、私の専門に重なる2.3について深掘ります。
“多様な学びの場”自体の幅を広げる
「COCOLOプラン 誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」で述べられている”多様な学びの場”は、以下になります。
- 学びの多様化学校(不登校特例校)の設置を促進
- 校内教育支援センターの設置を促進
- 教育支援センターの支強機能を強化
- 高等学校等の柔軟で質の高い学びを保障
- 多様な学びの場・居場所を確保
「5. 多様な学びの場・居場所」については、NPOやフリースクール等との連携やオンライン支援、または夜間中学、公民館、図書館等の社会教育施設の活用が例として挙げられています。
一方、安野たかひろさんのマニフェストでは、学びの内容として
・大学で提供される先取りプログラム(AP | Advanced Placement)の公立高校での受講推奨、支援
・NPOなど多様な講座の提供
・先端的STEAM教育を実践する実験校の設置
・学びの多様化校の仕組みを活用
等、最先端の学びの種類を挙げられています。
上記についても、「不登校支援」ではなく「教育全体」を対象にされているからという視野の違いも起因しているかと思います。
APやSTEAM教育、学びの多様化校等、専門用語が挙げられておりますので一つずつ少し補足します。
既に各国で採用されているプログラムですので、東京都での導入も現実的に思えます。また、プログラム内容も幅広く、世界で求められているレベル、世界で重要とされている知識を得られるという点でも、高校生が受講できるメリットは大きいのではないでしょうか。
子どもの実態に即したカリキュラムや仕組みを編成できる、多様化学校の仕組みを活用し、早期に多様な教育の提供を進める、と理解しました。
学校外の学びに繋げる為に、プラットフォームを作る
「不登校対策」においても、多様な学びの選択肢に繋げられているか?という点については、
「教育支援センターやフリースクールなど、学校以外の学びの場についての情報提供をもっとして欲しかった」
というニーズが各種調査から明らかになっております。
(総務省「不登校・ひきこもりのこども支援に関するアンケート調査の結果」、文部科学省委託事業「不登校要因分析に関する調査研究 報告書」)
子ども一人ひとりにあった学校外の学びに繋げる為に、プラットフォームを作るというのはAIエンジニアの安野たかひろさんだからこそ実現しやすそうな点でもあります!
また、「一人一人にあった」の内容として、「関心や認知特性」という観点を切り取られている点も独自、かつ具体的な視点に感じました。
認知特性については、以下2点のブログが参考になるかと思います。
安野たかひろさんのマニフェスト まとめ
物凄く長くなってしまいましたが…
安野たかひろさんのマニフェストの教育・不登校に関連する部分を見ていきましたが、
個人的には凄く具体的で現状に即しているうえに、
机上の空論ではなく、実現可能性も考慮された内容のように感じました。
(再三になりますが、政治的な主張をしたい訳ではありません。都知事の適任者を考える際には、教育以外の分野に対するマニフェストや、それを実行できそうな人物か等、多様な観点が必要かと思いますが、今回はあくまで限定された分野に対する意見であることをご考慮ください。)
また、マニフェストを拝見しながら改めて感じたのですが、
「不登校対策」として述べられているもの(文科省の提言や、私自身のブログも含め)は、
「不登校の子どもたち」という限定された子どもたちのための対策ではなく、
「多様な子どもたちみんなのための”対策”」….
というより
「多様な子どもたち、みんなのための”選択肢”」である
と考えることはとても重要なことではないでしょうか。
既存の公教育の他にも多様な選択肢を用意することで、
「”不登校の子ども用の場所”を選択した」ではなく、
「学校以外の学びの場を選択した」とフラットに表現される社会になれば良いなあと思いました。