【不登校関連】通信制高校の今 – 定義・特徴・数・推移・増加の背景・進路について

不登校・教育

 

急増している通信制高校。
不登校の児童生徒の進路の選択肢の1つとしても知られておりますが、
現在は様々な特徴を持つ魅力的な学校が増えてきております。

今回は通信制高校の定義や特徴、数や増加の背景、そして卒業後の進路について、データ等を用いてご紹介させていただきます。

通信制高校とは

通信制高校(高等学校通信制課程)とは、郵送やパソコン通信といった通信手段を用いて、
単位を取得することが可能な高校を指します。

通信制高校の特徴

この後詳細をご説明しますが、まず簡単に特徴を挙げます。

  1. 柔軟なスケジュール
  2. 個別対応が可能な学習サポート

通信制高校の特徴は一言で言うと、個人のペース・方法で学ぶことができる点と言えるでしょう。

 

通信制高校の教育の方法

ではなぜ、そのような柔軟な対応が可能かのか?通信制高校のシステムを確認していきます。
まず、通信制高校は以下3つの方法で教育を行います。

  1. 面接指導(スクーリング)*
    教師から生徒へ対面で行う指導のことです。
    勉強の指導だけでなく、体育や山登りといった体験指導等も面接指導(スクーリング)にあたります。

  2. 添削指導
    生徒はテキストや映像授業を参考にしてレポートを作成し、完成したら教師に提出します。
    教師がレポートを添削した後、それを生徒に返します。
    もともと郵送や学校への持参が一般的でしたが、Webサイト上でレポートを作成し、提出できる学校も増えてきております。
  3. 試験
    単位を認定する為の試験になります。年に2回程度が一般的です。
*面接指導(スクーリングは学校によって方法が異なり、
大きくは以下の2つに分類されます。

・通学型
週3日・週5日など、自分で日数決めて学校に通い、
教師の方に自習するなかでの不明点を聞く、同級生と関わるといった過ごし方をします。
・合宿型
学校や宿泊施設等でまとめて授業をうける方法です。別途宿泊費や交通費はかかることが多いようですが、極力学校に通いたくない方におすすめの過ごし方です。

上記3つの方法を組み合わせながら通信制高校は教育を行います。

その回数については、各教科・科目毎に1単位あたりの
添削指導の回数、面接指導の単位時間の標準が以下のように定められております。

引用:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」

 

 

基本的には自宅で学習を進め、適宜レポートを提出し添削してもらい(添削指導)、
わからないところ等は面接指導(スクーリング)時に確認することで学びを深め、
試験を受ける、というのが通信制高校での学びのサイクルになります。

 

通信制高校の卒業資格

気になる卒業資格ですが、以下3つを満たすことで得ることができます。

・3年以上の在籍(転校した場合は通算3年でOK)
・74単位以上の単位取得
・30時間以上の特別活動

特別活動とは、授業以外の活動を指します。

クラブ活動ホームルームやクラブ活動、入学式などの儀式的な行事、体育祭や文化祭などの各種学校祭、清掃活動や修学旅行など、他者との協調的な取り組みを行う体験学習などが挙げられます。

 

ここまで、通信制高校の定義と特徴を確認しました!
ここからはその数と増加率をご紹介します。

 

通信制高校の数

文部科学省(「高等学校通信教育の現状について」)によると、
令和2年(2020年5月1日時点)では全国に257校の通信制高校があるようです。

  • 全日制課程を置く高等学校は4,702校(全体の84.0%)
  • 定時制課程を置く高等学校は640校(全体の11.4%)
  • 通信制課程を置く高等学校は257校(全体の4.6%)

引用:高等学校通信教育の現状について

 

通信制高校数の推移

現在、通信制高校の割合は全体の4.6%に留まりますが、その増加率は全日制課程を大きく上回っています。

全日制・定時制高校が平成7年以降減少傾向にあるのに対し、

通信制高校は平成12年時点の113校に対して令和2年には257校となり、

2倍以上に急増していることがわかります。

引用:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」

通信制高校に通う生徒数の推移

高校の増加率と同様に生徒数についても、

全日制・定時制高校が平成2年以降急激に減少しているのに対し、

通信制高校は平成7年以降徐々にではありますが生徒数を伸ばしていることがわかります。

引用:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」

通信制高校・生徒数 増加の背景

ではなぜ、これだけ通信制高校は増加し、通う生徒も増えているのでしょうか?

明確な答えがある訳ではないですが、いくつか調査やニュースを取り上げつつ要因となりうるものを列挙します。

  • 不登校児童生徒数の増加に伴い、受け皿*となる高校が増加し、生徒数も増加した
  • 企業参入により、多様な通信制高校が増加した
  • 多様な価値観を認める社会の風潮に合わせ、多様な教育方法が提供され、生徒が自分に合った教育を選べるようになってきた

 

平成 23 年度に文部科学省が三菱総合研究所に委託した調査では、不登校経験を有す
る生徒の割合が 3 割を超えると回答した通信制高等学校は 71%5 割を超えると回答し
た学校に限っても 43%となっており、通信制高等学校においては、不登校経験を有する
生徒が占める割合が極めて高い実態が明らかになっている。

引用:文部科学省「高等学校通信教育の質の確保・向上方策について(審議のまとめ)」

 

通信制高校の進路

様々な魅力ある通信制高校が増えている一方で、
通信制高校を卒業した方々の進路どうなっているのでしょうか?

ここでは通信制課程の卒業後の進路について、進学率・就業率等について
全日制と比較した数値を記載します。
文部科学省「高等学校通信教育の現状について」

  • 全日制では過半数が大学等に進学するのに対して、
    通信制高校では5-6人に1人の割合で大学等に進学(17.6%)することがわかります。
  • 大学等進学者・専修学校(専門課程)進学者・就職者の割合は2割弱〜2割程度です。
  • その他が32.3%と一番多いです。
    (「進学も就職もしない」という消極的理由だけでなく、芸能活動やアーティストを目指し、現在はアルバイトに勤しんでいるという生徒も含まれます)

(令和元年度間に卒業した者のうち、令和2年5月1日現在のデータ)

通信制全日制
大学等進学者17.6%56.5%
専修学校(専門課程)進学者23.3%16.9%
就職者23.1%17.2%
その他32.3%4.4%

 

通信制高校の今 まとめ

*「不登校の子どもの受け皿」という表現には微妙なニュアンスが含まれます。

受け皿の定義は「たれてくるしずくやこぼれて下に落ちるものを受ける皿。」となります。

こぼれて下に落ちるという表現が個人的には好きではありません。

現在の文部科学省の「不登校」の捉え方としては、不登校は「誰にでも起こりうる」とし、対応の方向性としては「一人一人にあった多様な学びの場の確保」です。

通信制高校は受け皿、ではなく、多様な学びの場の一つであり、

現在は通信という学習方法のみならず、理念や学習内容も様々な魅力的な学校が増えております。

 

学校に行っていない子どもも、行っている子どもも、

それぞれが自分の特性や興味に応じて高校を選択できるよう、

通信制高校の知名度も上がっていけば良いなあと思っております!

調べていくなかで、今は多様な特徴を持った「通信制高校」があることを知った為、

今後「多様な通信制高校」をご紹介する記事をまとめてみたいと思います!

 

追記

一方…

良い面も悪い面も正しく理解する必要性があるかと思いますのであえて悪い声も取り上げます。

ネットで検索すると「通信制高校 やめとけ」が検索候補に上がります。

そこで上位掲載されるのが「口コミ掲示板 タイトル:やめとけ、マジでやめとけ。

誰かにとっては良い環境が、誰かにとっては悪い環境になりえます。

その意味で、通信制高校そのもの、そしてそれぞれの特色を持った通信制高校の実態を、しっかりと把握したうえで選択する必要性を改めて感じます。