本日取り上げるのは、「子どもの不登校による親の離職」についてです。
「NPO法人キーデザイン」が2024年2月16日~20日に、
不登校に悩む保護者向けのLINE相談窓口“お母さんのほけんしつ”を通して
3500人の保護者の方を対象に行われた調査について、
いくつかの媒体でも以下の記事として取り上げられています。
子どもの不登校による親の退職は14.8%
以下が「NPO法人キーデザイン」で行なった調査結果になります。
退職は14.8%、休職は6.9%、雇用形態の変更は14.4%、早退・遅刻・欠勤が多くなったは31.5%で
親の仕事の状況に影響があった割合は合計すると67.6%に上るという結果になりました。
上記調査の結果を見るだけでは、「子どもが不登校になると、子どもも親も大変」という
ただ苦しいだけの結果になってしまいます。
そこで今一度、
- なぜ親が仕事を辞める必要があるのか?
- 親は仕事を辞めるべきなのか?
- どうすることで親も子も大変な状況を少しでも緩和できるか?
を考えてみたいと思います。
ちなみに同様の調査を同団体が2020年9月、2021年10月にも行なっておりますが、
2024年現在近しい結果となっております。
・不登校は、子どもだけの問題ではない? 本当に必要なのは、子どもも親も含めた包括的なケア アンケートの概要(2020)
・不登校の子の保護者138名より声を集めました 独自アンケート 結果と考察
なぜ親が仕事を退職、もしくは状況を変更する必要があるか?
親が仕事の状況を変えざるを得ない状況は、どのような理由によるものなのでしょうか。
「NPO法人キーデザイン」での個別相談で挙がっていたは以下のような親の不安な気持ちでした。
小学生姉弟3人が不登校となり、さすがにそれぞれに付き添いや対応が働きながらは難しく、早退欠勤が増え辞めないと職場に理由を伝える辛さなどでどうにもならなくなってしまった。 収入が減るのは苦しいが、辞めて子供の側にいなくてはとも考えていたこともあり退職を選びました。
気持ちに寄り添うため、パートをしている場合ではないと思いました。 毎日、送り迎えに時間がみえないから、働くのは無理でした。給食は食べられなくなっていたので、家で食べさせてまた、学校に送ったりもしていました。 私がやるしかないと、思っていました。
行き渋りが始まってから、遅刻や欠勤が増えました。ある程度融通の効く仕事だったこと、また上司の理解もあったため、1年ほどはその状態で仕事を続けました。完全に不登校になってからは、さらに遅刻、欠勤が増えました。思うように仕事を進められず、職場に申し訳ない気持ちと、小学生の子どもを家に1人置いていく罪悪感を持ちながら過ごしていました。経済的なこと、職場環境や条件が良かったことを考えると辞めたくはありませんでしたが、これ以上子どもを1人にしてまで仕事を続けることはできないと思い、子どもと過ごすことを優先して、退職しました。
大きく分けると、以下の理由があることがわかります。
- 付き添いや送り迎えの対応
- 職場への申し訳なさ
- 子どもへの罪悪感、寄り添いたい思い
退職するとどうなるのか?
まず、退職すると当たり前ですが収入が減ります。
ただでさえ、学校とは別でフリースクールや塾の等に行く場合には追加で費用がかかるなかで、
収入が減ることは家庭にとっては辛いことかと思います。
また、「NPO法人キーデザイン」は以下の理由から、休職・退職を決断しても、良い方向に向かうケースは稀であるということを述べております。(こちらは2021年10月の内容です)
1. 母親が孤立してしまう
これまでであれば、職場の同僚や上司、部下など人とつながりを持ち、仕事で役目を持って自己の存在を認めてもらえていたのだが、仕事を休む、辞めることにより、人とのつながりも断たれ、誰にも自分の努力や葛藤を認知されないままに、家庭の中で孤立してしまう。2. 解決策が見いだせない
仕事から離れて、子どもと一緒に過ごす時間を増やしたからといって、すぐに解決の糸口が見つかるわけではない。上で述べたようにこれまでの個としての生活の充実感を失い、かつ精神的に不安定な子どもと一緒にいること、また自分の子どもが学校に行けないことへの不安や心配から、母親も一緒に苦しくなってしまう。
親は仕事を辞めるべきなのか?
前提としては、子どもが不登校になった際、「親が仕事を辞めるべきか辞めないべきか」については
両方の意見が存在しています。
色々なHPを見ましたが、「辞めないべきだ!」というHPもあれば「辞めるべきだ!」というものもあり、つまり、絶対的な正解はありません。
しかし、最近では「辞めない方が良い」という意見を多く目にすることが多いです。
メリット | デメリット | |
仕事を辞める | ・子どもと過ごす時間を確保できる ・送り迎え等ができる | ・収入が減る ・保護者の方の孤立につながる ・子どもが罪悪感を抱く |
仕事を辞めない | ・収入が維持される ・保護者の外部との接点が維持される | ・保護者が罪悪感を抱く ・送り迎え等ができない |
どうすることで、親も子も大変な状況を少しでも緩和できるか?
そうすることで、上記のデメリットに記載した「保護者の方が退職した場合の、お子さんが感じる罪悪感」や「保護者の方が退職しない場合の、保護者の方が感じる罪悪感」が軽減できるかもしれません。
不登校のお子さんをもつ親御さんの書籍では以下がとてもおすすめです!
子どもの不登校による親の離職について まとめ
不登校に限らず、育児をするにあたって何よりも難しいことは、決まった正解がないことのように思います。
お子さん一人一人の個性や状況、保護者の方の個性や状況、そしてご家庭の状況、地域の状況、学校の状況等々、関わる要素が多様すぎて一概に判断することができません。
そのなかで、今まで言われていたことは「お子さんの気持ち」を大事にすること。
しかし、子どものためにとにかく頑張らねばと思われている保護者の皆様には、
今一度「保護者の方の気持ち」にも耳を傾けていただきたいです。