【書評】フリースクールを考えたら最初に読む本

書評

前回は、不登校を考えたら最初に読む本として、「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」をご紹介しましたが、

【書評】NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書
「amazon カテゴリ:子どもの文化」でベストセラー1位 「NPOカタリバがみんなと作った 不登校ー親子のための教科書」を読みましたのでご紹介します。 お子さんが不登校、もしくは長期でお休みし始めて不安な親御さんが ...

 

次はもう一段踏み込んで、「フリースクールを考えたら最初にを読む本」のご紹介です。
ちなみに、タイトルはそのままです。

 

不登校のお子さんの学校外の居場所として、「フリースクール」を検討したい方におすすめです。
・そもそもフリースクールってどういうものなの?
・どういう点を考慮して選べばいいの?
といったことを知ることができます。

「フリースクールを考えたら最初に読む本」の著者

著者は「NPO法人全国不登校新聞社」代表の石井志昂さんです。

NPO法人全国不登校新聞社は、1998年に不登校に関する新聞として『不登校新聞』を創刊し、その後現在に至るまで不登校に関する情報の発信を行なわれております。

特定非営利活動法人全国不登校新聞社
NPO法人全国不登校新聞社は6月末をもって解散いたしました。

著者の石井志昂さんはご自身も中学2年生時に不登校を経験し、「フリースクール」に通われました。
その後20年以上にわたり、不登校をテーマに執筆を続けていらっしゃります。

 

「フリースクールを考えたら最初に読む本」のあらすじ

不登校の数が増え、文科省も「学びの多様化」の重要性と強調するなかで、

・フリースクールがどんなことをする施設なのかがわからない
・施設によって運営方針、資金力、実績も異なるなかで選択基準がわからない

といった疑問にお答えするべく、
本書では石井さんご自身が取材で得られた情報をベースに主に以下の内容をご説明されております。

  • フリースクールについての基礎知識
    – フリースクールの特性、費用
  • フリースクールの運営で重要なポイント
  • フリースクールを選ぶ時にたいせつにしたい視点
  • その他詳細Q&A、フリースクール経験者/親の体験談

 

まなびポイント

フリースクールの成り立ちや特性を知ることで、実際にフリースクールを選ぶ場合にはどんなことに気を付けるべきかのイメージが沸きました。

 

フリースクールは、民間人が設立できる

著作権の観点から、定義については文科省のHPから以下を引用します。

フリースクールとは、不登校の子供に対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設を言います。その規模や活動内容は多種多様であり、民間の自主性・主体性の下に設置・運営されています。平成27年度に文部科学省が実施した調査では、全国で474の団体・施設が確認されました。

参考:文科省「フリースクール・不登校に対する取り組み」

学校法人化や開業届の必要がないことは、一つの特徴として挙げられます。
実際には組織的な信用性が重要になる為、フリースクールの約46%は特定非営利活動法人(NPO法人)が設立しております。

・法人格を有する団体・施設:7割弱(NPO法人が5割弱)
・2000年以降に設立された団体・施設が全体の7割弱 (設立から30年以上経過している団体・施設も20以上存在)

参考:文科省 不登校児童生徒による学校以外の場での学習等に対する支援の充実

 

大事なお子さんを預けるにあたっては、ある意味で簡単に設立できてしまうからこそ、どのような団体が運営しているのか?も必須で確認すべき事項であると言えるでしょう。

 

フリースクールは、在籍校の認可により「出席扱い」になる

「フリースクール」に通うことで、義務教育を果たすことになるのか?という疑問は最初に浮かぶ疑問の一つでしょう。

結論からお伝えすると、
在籍校の校長が認めれば「出席扱い」となります。

実態としては、本書で以下の数値が紹介されております。

文科省の2015年の調査によると、フリースクールに通う子どものうち、
・小学生:52.9%
・中学生:58.1%
が出席扱いを受けています。

他校でも「出席扱い」の実績があるフリースクールであれば、ご自身の学校でも「出席扱い」となる可能性が高い為、選択時にはその観点も確認することが大事になります。

 

最終的には「通学定期の購入」も在籍学校の校長の判断にはなりますが、出席認定されている場合には、小中学生のフリースクールへ通う為の「通学定期券」の購入も認められているケースが多いこともチェックポイントです。

 

フリースクールの活動は多種多様である

本書でも引用されている、文科省の調査をもとにフリースクールの活動内容を見てみましょう。
*複数回答あり

・個別の学習を行っている団体・施設:約9割
・授業形式による学習:約4割で実施
・相談・カウンセリング:約9割
・体験活動等:約7~8割
・家庭への訪問:約5割

参考:文科省 小・中学校に通っていない義務教育段階の子供が通う 民間の団体・施設に関する調査(平成27年8月5日)

ご覧いただいた通り、フリースクールによって活動内容はまちまちです。HPの情報、説明会や見学を通して、ご自身のお子さんにあった活動の有無を確認しましょう。

 

フリースクールを選ぶときにたいせつにしたい6つの視点

是非詳細は本書をお手にとってご自身で確認していただければと思いますが、本書では以下6つの視点が紹介されております。

1. 学校復帰を前提としていない
2. 子どもたちの意見が運営に反映されている
3. 入会する前に相談や体験ができる/マンガやゲームがおいてある
4. 入会金や月謝が適切な設定である
5. 通っている子どもの半数以上が所属する学校で「出席認定」されている
6. 信頼できて相談しやすいスタッフがいるかどうか

「3. 入会する前に相談や体験ができる/マンガやゲームがおいてある」については、沢山のフリースクールをご確認された著者だからこその視点であるように感じます。

入会前の相談時には、スタッフの方のご対応を確認することができ、体験時には、「マンガやゲームがおいてある=子どもの気持ちへ寄り添い、安心できる環境整備を心がけているスクールである」と予想することができるとのことです。

 

感想

文科省の「「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」(COCOLOプラン)」においても居場所の重要性が強調されるなかで、フリースクールが不登校支援に果たす役割は大きくなっております。

一方で、あえて強い表現をすると、一概に「フリースクール」といっても、本書でも記載されているように、「法外に高額な授業料を設定しているフリースクール」や「学校復帰を目標として子どもの心に寄り添わないフリースクール」など「玉石混交」であることが実情です。

「フリースクール」へ通い始めることは、子どもが前を向いて、社会復帰をする大事な第一歩であることを考慮すると、できる限りその選択は慎重であるべきだと思います。

本書は、選択時に気を付けるべき点を指南してくれるという意味で、価値のある書籍だと感じました。

個人的には「選ぶときにたいせつにしたい視点」として、創設者・ならびに運営団体が「不登校」をどのように捉えているのか?も事前にHPやブログを通して確認したい視点の1つです。

上記の捉え方が、フリースクールの目的や、スタッフの不登校の子どもへの関わり方に反映されると考えられます。

「不登校は子どもの性格の問題 / 親の養育の問題」など、数少ない事例から算出された偏った原因と支援方法をよりどころに運営されているフリースクールではなく、「不登校」は子どもの一つの選択肢として捉え、過度に「不登校」を特別視することなく、子ども一人ひとりの特性を大切にしてくださる居場所であればいいなあと個人的には考えております。

 

「フリースクールを考えたら最初に読む本」のまとめ

「フリースクール」について、全体像、選ぶ際の視点、経験談まで知ることができる書籍です。
子どもの居場所として「フリースクール」を検討されている方は、一度手にとっていただいて損のない書籍かと思います。