【書評】不登校・ひきこもり急増 コロナショックの支援の現場から – アウトリーチの方法

書評

 

私自身様々な居場所の経験はあるのですが、アウトリーチについては経験が無く、
その点について勉強したく手に取ったのが「不登校・引きこもり急増」です。

ちなみに私は、とにかく様々な本を読み、色々な可能性や切り口を知っておきたい
という前提のもと本を読んでおりますし、ご紹介もします。

特定の本や知識や情報を、唯一の正解として紹介することはありませんので、
読んでいただく方、参考にしてくださる方も
「こういうケースがあるんだ」という理解をしていただいた上で、
目の前のお子さんにとってはどうなのか?を都度立ち止まり、観察し、関わり、
活かせることがあれば活かしていただきたければと思っております。

 

NPO法人高卒支援会が著した書籍で、​新型コロナウイルスの影響により増加した不登校やひきこもりの子どもたちへの支援の実態を、個別事例とそれらの事例から抽出した「アウトリーチのステップ」を紹介しております。

【目次】

第 1 章 コロナショックによる不登校・ひきこもりの急増と不透明化
第 2 章 コロナショックで困難になる立ち直りへのステップ
第 3 章 立ち直る過程で起こった、コロナによる挫折
第 4 章 オンラインが救った不登校・ひきこもりの生徒たち
第 5 章 コロナ禍における教育支援センターの問題点
第 6 章 アウトリーチ支援 ステップ0
第 7 章 実例で解説するアウトリーチ支援ステップ
第 8 章 将来を見据えた特別授業と、支援の広がり
第 9 章 ゲームの有効性――eスポーツ部の意義
第 10 章 規則正しい生活を確立するための方法――生活改善合宿
第 11 章 自立した生活のために――一人暮らしのすすめと、親の覚悟
第 12 章 女子に多い不登校タイプと新しい進路の形――インターン経験を活用した総合型選抜入試

 

学びポイントと感想

以下いくつかのポイントにまとめて、学びポイントと感想を記載します。

 

アウトリーチのステップ

本書のメインで扱われているのが、家に引きこもっている児童生徒に対するアウトリーチの方法です。
本書では不登校・ひきこもりを治す方法として、以下3点が挙げられております。

①規則正しい生活をする
②自律して自信をつける
③社会貢献をする

実際にはステップ0〜9まで、ご家族とのご相談から職員会議まで事細かな対応がされているようです。
詳細を知りたい方は書籍でご確認ください。

 

昼夜逆転・生活リズムを整える

不登校支援=カウンセリング、がまず思い当たるかもしれませんが、
個人的には生活リズムを整えることから始めるのもとても大切ではないかと思っております。

大人でも、昼夜逆転して、不健康なものを食べて暮らしていると、心身ともに正常じゃなくなってきますよね。

実際に本書でも、以下のように説明されており、具体的な対策として
2泊3日程度の生活改善合宿が行なわれている事例が紹介されております。

ひきこもりになった子どもたちの多くが、昼夜逆転の生活になっていきます。逆に朝起きれないというところから、不登校が始まり、引きこもりになる子も多くいます。この生活を直さないと、立ち直りのステップを順調に進められません。(中略)立ち直るための全ての基盤は、規則正しい生活にあるのです。

引用:p.196

 

 

趣味のあう大学生の存在

各事例においては、大学生インターンの活躍が多く紹介されます。

大学生インターンは、対象となる子どもと境遇や趣味が近しい方が選ばれ、
時に自身の不登校経験を共有しつつ、友人や先輩といった関係性から子どもの支えとなります。

 

このことから彷彿されるのがメンタルフレンドでした。

メンタルフレンドとは?

不登校の子どもに寄り添い、安心できる関係を築く「心の友だち」や「お兄さん・お姉さん的存在」のことです。学校に行けない子の話を聞いたり、一緒に遊んだり、家を訪ねて過ごしたりしながら、子どもが安心できる時間とつながりを届けます。

 

自治体でも取り入れられており、実際私が関わっていた自治体では

希望者に対してメンタルフレンドが足りず、順番待ちが起こっていました。

 

教師や大人だと抵抗感がある子もいる一方、
ただのお兄さん、お姉さんであれば、心を開きやすいという心理があるようです。

一方で、自宅という「自分のスペース」に見ず知らずの人が入るという侵入性を
嫌がるお子さんもいらっしゃいます。

他の支援同様、メンタルフレンドがあうかあわないかもそれぞれですので、
ご興味ある方はお子さんとご相談のうえ、ご自身の自治体で調べていただければと思います。

 

ゲームの捉え方

ちょうど「ゲームと不登校」という書籍を読んでおり、そこではどちらかというと不登校時にゲームを与えるリスクに焦点が当たっています。(ゲームを通した子どもの理解も記載されていますが)

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一方、本書におけるゲームの取り上げ方は肯定的であり、改めてケースバイケースであることを感じました。

ゲームのメリットとして、以下のようなアウトリーチ支援における活用方法が紹介されておりました。

  • 好きなゲームの話をして、コミュニケーションを深めていく
  • 一緒にプレーする中で、心を開いていく
  • 登校し始めた後、友人たちとまたゲームをプレーする

 

村人M
村人M

私自身子どもたちと仲良くなる(関係を築く)ために、共通の趣味・好きなことの重要性をひしひしと感じております。というか、子どもに限らず、大人でも基本的に同じかと思いますが…。その中で、現代の子どもたちとの共通項を作りやすいのがゲームだとした時に、必要に応じて活用することはやはり考えていきたいたいです。

 

また、とても印象的だった言葉が、1日10時間程ゲームをしていた高校生の言葉です。

自分がひきこもった原因はゲームではありません。ほかに何もすることがなく、後ろめたさを忘れるためにゲームに逃げたのです。ゲームでなくても、逃げられるものがあれば、何でもよかったのです。

引用:不登校・ひきこもり急増(p.175)

 

ゲームが大好きな子どももいる一方で、学校に行かないことでできた埋めることのできない膨大な空白の時間と心を埋める為にゲームを始め、のめり込んでいる子どもたちも多くいるのではないでしょうか。

ゲームをしているという行動のみならず、その背景にも目を向ける必要性を改めて実感します。

 

ゲームについては、別途もう少しいくつか読んだ上でまとめようと思います。

 

おわりに

一つの書籍を参考にすると意見が偏ってしまう為、いくつか読まれることをお勧めします。

しかし、お一人でさまざまな書籍を読んで正解を探す大変さ、苦しさもとてもわかります。

ですので、身の回りの方やカウンセラー、そして私など、人にもご相談しながら、

書籍も都度読まれるといった関わりかがお勧めです。

 

ご相談いただきましたら、おすすめの書籍をご紹介いたしますのでお気軽にご連絡ください。