【書評】知的障害と発達障害の子どもたち

書評

 

今回ご紹介するのは、2024年3月7日発売の「知的障害と発達障害の子どもたち」です。

2024年3月20日現在、amazonの「こどもの医学」カテゴリの中で
ベストセラー1位となっております!

 

・知的障害について知りたい方
・発達障害と知的障害の違い、共通点を知りたい方
・発達障害と知的障害の子どもへの支援の仕方を知りたい方
におすすめしたい一冊です。

「知的障害と発達障害の子どもたち」の著者

著者は精神科医、かつ信州大学医学部 子どものこころの発達医学教室 教授、かつ
特定非営利活動法人ネスト・ジャパン代表理事でもある
本田秀夫さんです。

ご専門は児童精神医学で、主に発達障害の早期発見、早期介入を提唱されております。

 

発達障害に関連する書籍は今まで20冊近く執筆されており、私も以下の本は拝読しました。

 

どれも大変わかりやすいのですが(それぞれ学べる内容も異なりますが)、情報が網羅的、かつ具体的な事例、具体的な支援方法が記載されており、多様な子どもたちの実態と支援方法を学ぶという点で、私は特に本書「知的障害と発達障害の子どもたち」が勉強になりました。

 

「知的障害と発達障害の子どもたち」 まなびポイント

・知的障害、発達障害の基本について
(医学的観点/法律的観点/併存有無/相違点/対応方法)
・知的障害、発達障害の子育てについて
(勉強/人を頼るスキル/将来からの逆算/支援の受け方/進路)

等、上記でも一部抜粋ですが、幅広い知識と作者の方の経験をもとにした具体的な事例とアドバイスを学ぶことができます。

詳細な情報は本書を実際に手に取ってもらうとして、以下本書から学んだ「考え方」と、私がそこから「学んだ内容」を記載します。

 

最も重要なのは早期発見・早期支援

本書で繰り返し述べられており、最もお伝えしたいと思われる内容が早期発見・早期支援です。

・子どもに無駄な苦労や失敗体験をさせてはモチベーションの低下につながってしまう
・であるならば、最初からサポートをすることで、子どもらしい社会参加を促すべき
・早くに支援につながれば、親子ともに安心して過ごせる

とのことです。

 

著者の経験からは、「支援を受けた人は落ち着いている(ことが多い)」とし、以下のように述べられております。

進路選択に正解はありませんが、私の実感としては、知的障害や発達障害の子は、中学卒業後に特別支援学校や高等特別支援学校で学習して、一般企業への障害者就労や福祉的就労をした場合には、その後、落ち着いて生活できていることが多いように感じます。

引用:「知的障害と発達障害の子どもたち」p.119

 

本書を読んで改めて、知的障害・発達障害の支援、育児の難しさは

本人の困難さが周囲からはすぐに理解ができないことにあるように思えました。

 

本書で挙げいていた以下の例が私としてはわかりやすかったのですが、

「車椅子に乗っている子」に通常学級の体育の授業で、(中略)「あなたも車椅子から降りて、みんなと同じように立ち上がって走ろうよ」とは言わないでしょう。

引用:「知的障害と発達障害の子どもたち」p.177

身体障害であれば、本人がどんな行動に困難があるかは客観的に理解しやすく、だからこそ支援の必要性は判断しやすいかと思います。(あくまで比較的に…という意味合いで、ご本人の困難さを真に体験することなく、想像しつくすことはできないですが。)

 

知的障害、発達障害の場合、身体障害と同様に

どう頑張っても定型発達の人と同様のことはできない

にも関わらず、

周囲がそれを求めてしまうことで、本人が強い劣等感や苦しみを味わうことになってしまう。

 

その危険性を鑑みると、改めて早期発見・早期支援の重要性が身に染みるように感じます。

 

 

子どもが身につけるべきスキルは「自己決定力」と「相談力」

自立に必要な「自己決定力」「相談力」は、知的障害、発達障害を持つ子でも身につけることができるスキルである、とのことです。

 

もちろん、年齢が低かったり障害の程度が重い場合には、複雑な状況を理解し判断することは難しいですが、その場合には大人が以下のような支援をすることで、自己決定をサポートすることができます。

・視覚情報を活用して情報を理解しやすくする
・子どもの「やりたい」「やりたくない」等の意思を言動や表情など、
非言語情報を観察して希望を確認

 

以前別の記事で紹介したこともありますが、(これは障害の有無に関わらず)、
所得、学歴よりも「自己決定」が幸福感に強い影響を与えていることが調査から明らかになりました。

特に障害を持つ子どもたちの場合には、

・「通常学級」か「支援級」か
・「進学」か「就職」か

といった大きな人生の選択を、比較的早期の段階で行う必要に駆られることがあるかと思います。
その際に、障害があるからといって、周囲の大人のみで判断するのではなく、本人の意思を尊重する工夫を行うことは、意識したいことです。

 

「知的障害と発達障害の子どもたち」 感想

知的障害と発達障害の子どもたちを支援するにあたっては、

  • いかに本人の困り感を理解できているか
  • いかに現場のリアルを知っているか

が重要なのではと本書を通じて感じました。

 

・知的障害、発達障害のなかでも幅広いグラデーションがあるなかで、本人はどこまで理解していて、何に困難を抱えているのか?

本書では、「年齢と知的機能の関連」が参考情報として紹介されておりました。
「年齢は10歳だけれど、知的機能としては7歳未満」とわかれば、
理解が大幅に進みますよね!

・「インクルーシブ教育」が叫ばれる現在ですが、
実際には知的障害や発達障害、境界知能の子どもたちは通常学級でどのように過ごすことになるのか?

先生方に支援を必要とする子どもたちをサポートしたいという思いがあったとしても、実際問題として30-40人/1クラスの中で、個別支援を行うことは限界があります。

 

それらの知識を入れる為に、「知的障害と発達障害の子どもたち」は大いに役立つ書籍でした。

 

私自身今後も経験に加え、書籍からのインプットも継続していきたいと思います!