【不登校関連】不登校の子どもと保護者の”ニーズ”について – ニーズから対応を考える

不登校関連調査

 

前回の記事にて、2024年3月26日に発表された「不登校の要因分析に関する調査研究」の内容を要約しましたが、

その調査の補足情報として調査された「不登校の子どもと保護者のニーズについて」

不登校に関連する環境改善を検討するにあたり大変重要なものだった為、
今回はその結果と要約をまとめていければと思います。

 

吹き出しに、個人の意見や解釈を記載しております。

調査方法や同調査全体の概要・要約は以下の記事にまとめておりますのでそちらをご覧ください。

 

「児童生徒及び保護者のニーズについて」 概要

「児童生徒及び保護者のニーズについて」まとめたものとして、
「不登校の要因分析に関する調査研究」の中でP.32以降に以下の項目が説明されております。

(1)不登校になったときの対応・相談について
① 学校を休んでいる(休みがちな)ときの対応(教師回答)について
② 相談に関する児童生徒の回答
③ 学校に戻るために有効なことに関する児童生徒の回答
④ 不登校支援に関する保護者の回答(2)不登校のときの生活について
① 不登校時の外出について
② 不登校時の家での過ごし方、学習について(3)令和 5 年度の状況について
① 令和5年度の登校状況について
⑥ 令和5年度の抑うつ・不安症状

上記の中から、私の方で特に気になった点を抜粋し、

要約およびデータの再加工を行なっております。

 

児童生徒のニーズ – 不登校時の対応


「前の学年で、学校を休んでいるとき、どのようなことがあれば学校に戻りやすかったと思いますか。」
との質問に対する、不登校児童生徒の回答が以下になります。

引用:文部科学省委託事業 不登校要因分析に関する調査研究 報告書

多い順では以下になります。

・友達からの声がけ:36.8%
・家族からの声がけ:23.0%
・個別に勉強を教えてもらえること(学校以外も含む):22.6%

 

児童生徒が不登校になった際に、学校でもクラスメイトに声がけをお願いすることがあるかと思いますが、それが有効であるという結果となりました。(とはいえ残り6割強の児童生徒にとっては有効ではない可能性もあり、常に対応には慎重である必要はあります。)

また、上記の結果に加え、不登校のきっかけとして約5割の生徒が学習面を挙げていたことからも、不登校時の対応として学習支援は有効である可能性が高いことがわかります。

 

保護者のニーズ – 不登校時の対応

不登校が解消された際の対応の評価

「お子さんが学校を休みがちになった後、その状態が解消された(学校を休まなくなった)ことはありましたか。」という質問に対して、「はい」と回答した保護者38.2%に対して、
「解消されたとき、以下のことは役に立ったと考えますか。」と質問した際の回答が以下になります。

引用:文部科学省委託事業 不登校要因分析に関する調査研究 報告書

・友達からの声がけ:72.5%
・家族からの声がけ:70.4%
・先生とインターネットや電話で話すこと:57.1%
・自分以外の家族への働きかけや手助け:49.3%
・個別に勉強を教えてもらえること(学校以外も含む):39.1%

・保護者の回答については「学校に行かない状態が解消された保護者」の方に限定して質問をしている
・児童生徒に対してはニーズ、保護者に対しては結果を聞いている

等の差分がある為、数値を単純に比較することはできませんが、

両者において「友達からの声がけ」「家族からの声がけ」が役立ったことがわかります。

 

ただここで気をつけなくてはならないのは、この対応は不登校が解消された=再登校した際の対応であることです。「再登校が目標ではなく、社会的自立を目標とする」ことが国の方針としても定められているため、子ども一人一人にあった対応を考える際には、上記以外の有効な対応が可能性としてあることを見落とさないよう注意する必要があるかと思います。

 

不登校時の学校の対応の評価

「前の学年に限らず、お子さんが学校を休んでいる時(休みがちになっている時)の学校の対応について、どのように評価していますか。」という質問に対する回答は以下になります。

引用:文部科学省委託事業 不登校要因分析に関する調査研究 報告書

 

上記データから以下を把握したく、再加工しました。
❶学校の対応について、実施された結果「よかった」「よくなかった」
❷学校の対応について、実施されなかった結果「実施されず残念」、「実施されなかったが、むしろよかった」

 

❶学校の対応について、実施された結果「よかった」「よくなかった」

参考:文部科学省委託事業 不登校要因分析に関する調査研究 報告書

 

❷学校の対応について、実施されなかった結果
「実施されず残念」、「実施されなかったが、むしろよかった」

本項目において、

  • 「実施されず残念」=ニーズあり
  • 「実施されなかったが、むしろよかった」=ニーズなし

と捉えられるかと思います。

参考:文部科学省委託事業 不登校要因分析に関する調査研究 報告書

上記は正しく理解する必要がある結果のように思えます。

①〜④は「不登校の解消に役立った」「実施されてよかった」対策として上位にあった項目である一方で、本ニーズの調査では「実施されなかったが、むしろよかった」が「実施されず残念」よりも多数であるという結果になりました。

本質問回答では「同級生や友達からの声かけ」や「別室登校」よりも、
以下の項目がニーズとして多いことがわかります。

・学習支援:88.7%(以下項目の合計)
 - ⑥学校によるオンラインを活用した学習支援(オンライン教材の提供やオンラインによる同時双方向授業など):39.8%
 - ⑦①〜⑥以外の学習支援:48.9%
・教育支援センター(適応指導教室)など学校外の教育機関の紹介:30.6%
・就学援助などの経済的支援の利用:37.2%

調査結果の解釈

以下2つの結果が真逆の傾向を示していたことは、どのように解釈できるのでしょうか。

❶学校の対応について、実施された結果「よかった」「よくなかった」
❷学校の対応について、実施されなかった結果「実施されず残念」、「実施されなかったが、むしろよかった」

  • 「学校の先生による家庭訪問」「同級生や友達からの声かけ」は、
    実施された結果としては圧倒的に「よかった」と答えた割合が多かったのに対して、
    実施されなかった結果としては「実施されなかったが、むしろよかった」と答えた割合の方が多い
  • 「学習支援」については、
    実施された結果としては、他の対応と比較して「よかった」と答えた割合が少ないのに対して、実施されなかった結果としては「実施されず残念」が他の対応と比較して多い
仮説としては以下が挙げられます。
(あくまで仮説です。また、私が考えられていない仮説がありましたら、是非教えていただきたいです。)

仮説1. ニーズと実際に実施された場合の感想の差

「期待していた結果と実施された場合の結果が異なる」為、回答の傾向に差が出たという仮説です。
具体的には以下のような可能性が挙げられます。
・実施されなかった結果「実施されず残念」と回答された数が多い対応は、実際に実施された場合には「よくなかった」と回答される可能性がある
・逆も然りで、実施されなかった結果「実施されなかったが、むしろよかった」と回答された数が多い対応でも、実際に実施された場合には「よかった」と回答される可能性がある

「オンラインを活用した学習支援」をして欲しい!と思っても、実際に活用するにあたっては保護者の方、もしくは他の大人のきめ細かいサポートなしには継続が難しく、想像通りにはいかなかったというケースは想定できる気がします。

 

仮説2. ニーズに応じた対応がされているケースと、されていないケースの差

対応の内容によって、ニーズの把握と対応の実施難易度が異なることにより差が出たという仮説です。
こちらもややこしいので具体例を挙げます。

・「学校の先生による家庭訪問」や「同級生や友達からの声かけ」は、事前に(学校と相談のうえ?)
対象の児童生徒に必要かどうかの判断ができており、ニーズがある生徒には適切に対応が行えた。
その結果、必要な子どもには対応が実施され、実施された回答として「よかった」が多く、実施されなかった回答としては「実施されなかったが、むしろよかった」と回答された数が多くなった

・「学校によるオンラインを活用した学習支援(オンライン教材の提供やオンラインによる同時双方向授業など)」や「①〜⑥以外の学習支援」、「教育支援センター(適応指導教室)など学校外の教育機関の紹介」については、ニーズを把握していても実際にその対応を、”求められる質”で提供する方法がなかった。(難易度が高かった)

その結果、そもそも実施された場合の回答数が少なくなり、実施されなかった回答が多くなった。
実施されたとしても期待には届かず「よくなかった」という回答が増えた。

 

解釈のまとめ

上記2つ仮説を述べましたが、どちらかの結果が100%反映されるのではなく、両方の仮説、そしてその他の要因がそれぞれ影響して調査の回答に反映されていると考えます。
そのうえで、改めて私がこのデータを解釈する差異に意識したいなと思ったことを以下に記します。

前提として、

①本来学校に戻りたいけれどなんらかの理由から戻れない児童生徒
②そもそも学校にあわず、学校に戻りたいとは考えていない児童生徒

がいらっしゃると私は考えております。

その前提に立つと、上記調査の

  • 「前の学年で、学校を休んでいるとき、どのようなことがあれば学校に戻りやすかったと思いますか。」に回答した児童生徒
  • 「お子さんが学校を休みがちになった後、その状態が解消された(学校を休まなくなった)ことはありましたか。」という質問に対して、「はい」と回答した保護者38.2%のお子さん

は、①本来学校に戻りたいけれどなんらかの理由から戻れない児童生徒、であると想定されます。

逆に②そもそも学校にあわず、学校に戻りたいとは考えていない児童生徒の場合には、「担任教師の家庭訪問」はもちろん、「同級生や友だちからの声かけ」も負担に感じるのではないでしょうか。
データというのは全体を見て傾向を把握するという点ではとても価値がありますが、
一方で児童生徒のニーズを把握し、適切な対応に繋げることを考えるうえでは、データの背景を細かく想像することが必要だと感じました。

「児童生徒及び保護者のニーズについて」 まとめ

データを見ていたら疑問が湧いてきて、それを解釈する過程を記載していたら長くなってしまいました・・・。

わかりやすい説明の記事ではなく、一緒にもやもやに誘導するような記事となってしまい恐れ入りますが、ニーズといった人の気持ちに関わる部分は「わかりやすいものではない」為、「ああなのか?」「こうなのか?」を考えるプロセスこそ重要だと思うので、お付き合いいただいた皆様、ありがとうございます。

さて、いろいろな仮説、解釈があるなかですが、私が理解したことを改めて以下に示します。

子どものニーズを考えるにあたっては、以下をまずは把握することが大事なのではないか?
①本来学校に戻りたいけれどなんらかの理由から戻れない児童生徒
②そもそも学校にあわず、学校に戻りたいとは考えていない児童生徒
①本来学校に戻りたいけれどなんらかの理由から戻れない児童生徒
の場合には、アンケート結果からもわかるように

「友達からの声かけ」や「保護者の方の声かけ」が良い影響を与える
学習支援のニーズは高く、「個別に勉強を教えてもらえること」を求める声が多い
(オンライン教材の提供や学校のオンラインによる双方向性の授業等は、実施後「よくなかった」と回答する保護者の方も一定数多く、実施方法等は検討する必要がありそう)

 

正直まだニーズの部分については、先行研究や調査も少なく、まだ私自身よくわかっていないというのが本音です。

しかしニーズの把握は子ども一人一人にあった対応を考えるにあたって、必要不可欠なことかと思いますので、引き続き理解に尽力していきたいと思います。

 

本記事では不登校の「ニーズ」の部分を抜粋しましたが、調査の全体像は以下記事からご覧いただけます。