【書評】学校は行かなくてもいい: 親子で読みたい「正しい不登校のやり方」

書評

今回は、不登校を経験した著者が、不登校経験中の思い、復帰までの道のり、ご経験をふまえた不登校中の過ごし方を紹介した「学校は行かなくてもいい: 親子で読みたい『正しい不登校のやり方』」を読みましたので、感想を中心にご紹介いたします。

 

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・不登校を経験された後、社会で活躍されている方の事例を知りたい
・不登校時に、子ども、そして保護者が意識すべきことを知りたい
という方にオススメの一冊です。

「学校は行かなくてもいい: 親子で読みたい『正しい不登校のやり方』」の著者

「#不登校は不幸じゃない」のハッシュタグはご存知でしょうか?
著者はご自身も不登校を経験し、上記ハッシュタグの発起人でもある小幡和輝さんです。

現在はゲームのオンライン家庭教師「ゲムトレ」を提供する、株式会社ゲムトレの代表取締役社長も務めていらっしゃいます。(2021年9月28日付で株式会社カヤックへ株式を売却し、面白法人カヤックの子会社となりました。)

本書にてご自身のご経験が多く記載されておりますので、詳しくはそちらをご覧いただければと思いますが…
教育熱心なご両親の元に生まれ、好奇心も旺盛な少年だった小幡さんは、「空気を読まなくてはいけない」ような、居心地が悪い学校に違和感を感じながら過ごしていたある日、「理由もなくクラスメイトから殴られたこと」がきっかけ(今となると「学校へ行かなくなる理由ができた」という捉え方みたいですが)となり、小学2年生で不登校になられております。その後、夜間の定時制学校に通い始め、ある時あるNHKのイベントでの友人との出会にいより、イベント企画に興味を持ち、企業するに至ります。

ご自身のHPもお持ちです↓

小幡和輝ってどんな人?(実績やプロフィールなど)|小幡和輝オフィシャルブログ 不登校から高校生社長へ
初めまして。 小幡和輝(おばたかずき)と申します。 この記事ではこれまでの経歴、やってきたこと、考え方などを書きたいと思

 

「学校は行かなくてもいい: 親子で読みたい『正しい不登校のやり方」』のあらすじ

本書では小幡さんのご経験をもとに、以下の内容をご説明されております。

  • 学校に行く意味とは?
  • 不登校時の心構え
  • 不登校からの仕事の見つけ方

 

まなびポイント

ご自身のご経験のみならず、不登校をご経験された他の方のインタビューも掲載されており、その皆様のご経験の共通点が個人的にはとても勉強になりました。

 

面白い!やってみたい!のきっかけづくりの重要性

本書でご紹介されている、不登校をご経験された方が社会に復帰していく過程には、「面白い!やってみたい!」と思う何かへの出会いがあります。そしてその出会いの前には、周囲の方からの働きかけによる「きかっけ」があります。

 

小幡さんのケースでは、NHKのイベントで友人に出会い、その友人から「イベントのお手伝い」に誘われてイベント企画に携わったことが「面白い!やってみたい」のきっかけとなっております。

小学5年〜中学2年まで不登校をご経験され、高校で世界最大の科学コンテストにて賞を受賞し、その後「孤独の解消」をミッションとして分身ロボットとの研究開発に取り組む株式会社オリイ研究所の代表取締役所長の吉藤オリイさんは、ある日母親が「折り紙ができる人は、きっとロボットができるに違いない。地元のロボットの大会に申し込んでおいたから出てらっしゃい」と言ったことがロボットの世界に踏み込むきっかけです。

小学校高学年〜中学3年生まで不登校だった3人からなるバンド「JERRYBEANS」のベースの八田さんは、親が音楽雑誌を買ってきてくれたことがきかっけで音楽に興味を持たれております。

 

 

「面白い!やってみたい!」と思う何かは、当たり前のことではありますが、出会ってみないと気づくことができないでしょう(大人も同様な気がします)。もし学校に通っていたり、友達と遊んでいたり、外部との接点があればその出会いが偶然にあるかもしれませんが、不登校の選択をされていた場合には、周囲の方が意図的にきかっけを作ることがとても大切であるように感じます。
もちろんその時には、お子さんのプレッシャーにならないように、さりげなく、紹介するような形で..!

 

お子さんが「面白い!」「やってみたい!」と思える何かに出会えるように、周囲の方がさりげなくきかっけを作ること(イベントに誘ったり、本や雑誌を渡してみたり…)が大事になります。

 

不登校の経験は「恥ずかしい過去」なのか?

こちらは、前述しました不登校を経験されてバンドでご活躍されている「JERRYBEANS」の八田さんの発言です。

今の活動をするまで、不登校の経験は「恥ずかしい過去」だと思ってたよね。全然そんなことないのに。

 

本書の内容からは少し離れますが、不登校を経験された方の復帰のプロセスを研究した論文はいくつかあります。そこで共通して述べられるのが、この不登校経験の意味づけの変化です。

多くの子どもが、当初「学校に行くのが当たり前」という価値観の中で生きている為、「学校に行かない=不登校」は「問題/普通ではない」と捉えます。世間の「普通」から外れることは、子どもに強い精神的苦痛や、周りからの評価の低下といった考えを生じさせます。

しかし、その後回復していくプロセスを経て「不登校」は「自分について考える為の機会」といったポジティブな意味づけへと変化していきます。

参考:
不登校経験の意味づけと不登校児に対しての対応の検討―不登校経験者の語りから―(2020,上田)
「不登校」ナラティヴのゆくえ」(2001,瀬戸)

 

実際に、文科省の「不登校生徒に関する追跡調査報告書の追跡調査(2014年発表)」によると、「かつて不登校であったことがマイナスに影響していると感じているか」という質問に対して、

・マイナスに影響していると感じている:23.9%
・マイナスに影響していると感じていない41.2%
・どちらとも言えない:34.7%

不登校によるマイナス影響を感じていない方が半数近くである、という結果になっております。

参考:不登校に関する実態調査報告書 第3部 分析編

 

「不登校は恥ずかしい」という事実は存在しません。(「恥ずかしい」は感情ですので、もちろん事実ではないですよね。)しかし、多くの子どもたちにそう感じさせてしまっていることは、私たち大人、そして社会に原因があると言わざるを得ないでしょう。

不登校の子どもたちの苦しみや葛藤を、少しでも軽減させる為には「人と違うこと」「人と違う選択をすること」に対して偏見を持たずに受け入れて、その選択を暖かく見守る、尊重する、必要に応じて新たな選択肢や可能性を提示する、などの関わり方をしていくことが求められるでしょう。

 

「学校に行くのが当たり前」の価値観の中にいると、不登校の子どもたちは「普通ではない自分」に対して苦しみ、葛藤します。周囲の大人たちは「人と違うこと」「人と違う選択をすること」は「恥ずかしいことではない」ことを、関わりによって伝えていくことが重要です。

 

「学校は行かなくてもいい: 親子で読みたい『正しい不登校のやり方』」のまとめ

社会で活躍されている不登校経験者の方のお気持ちや、社会へ復帰していくプロセスを知ることができる書籍です。

一つだけご注意いただきたいのは、もし、ご自身・もしくはご自身のお子さんが著者の方と違うタイプであったとしても(コミュニケーションに対して積極的ではない、まだ自分のやりたいことが見つかっていない等)、そのことも「問題」ではありませんので、焦ったり、比較したりする必要はありません。この本で一番強調されたいことは、タイトルにもある「学校は行かなくていい」ということであると、私は認識しております。

 

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