【書評】自閉症の僕が跳びはねる理由 – “エンパシー”の向上

書評

 

今回ご紹介するのは、

「自閉症の僕が跳びはねる理由」です。

 

「発達障害大全 ― 『脳の個性』について知りたいことすべて」の中で紹介されており読んだのですが…

本当に素晴らしくて素晴らしくて…(語彙不足)

自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の方々見ていらっしゃる世界を、

少しでも知りたいと思う方々の必ず助けになる一冊です。

 

「自閉症の僕が跳びはねる理由」概要

重度の自閉症である東田直樹さんの自伝です。

2007年に日本で出版し、2013年に英訳された後、

世界30カ国以上で出版され、累計117万のベストセラーになりました。

 

自閉症の方々の一見不思議に思える行動に対して説明を試みるという切り口から、

自閉症の方が考えている、感じていることを、真摯で切実で生身な言葉で表現された一冊です。

 

本書の内容の引用等は厳密に禁止されておりますので、内容には触れず

概要をご説明することで本書を紹介するという方法を取らせていただきます。

 

東田直樹さんについて

1992年生まれ、現在32歳(2024年現在)。

重度の自閉症と診断されながら、作家として20以上の書籍・絵本を出版されております。

幼少期、発話が難しい東出さんに対して、お母様が文字盤を使った意思疎通の方法を編み出し、

コミュニケーションが取れるようになります。

そして13歳の時に自閉症であるご自身の思いを綴った「自閉症の僕が跳びはねる理由」を執筆します。

僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて
じっとしていることも
言われた通りに動くこともできず
まるで不良品のロボットを運転するしているようなものです。

引用:【EXIT】自閉症のベストセラー作家にリアルな思いを聞いてみた【めざまし8】内、
「自閉症の僕が跳びはねる理由」から抜粋箇所

 

冒頭記載したように、その後その本が英訳され世界的なベストセラーとなり、

2020年にはイギリスで映画化もされております。

現在は各地で講演をされる等、幅広くご活躍をされており、

2021年にはフォーブス30アンダー30(日本版)の1人にも選ばれていらっしゃいます。

 

「僕が跳びはねる理由(The Reason I Jump)」の映画はU-next, huluで見られます!

本、並びに東田直樹さんに興味を持ってくださった方には、以下動画で実際に文字盤を使用しお話されている様子もご覧いただけますので、是非ご視聴ください。

 

 

その他、ご自身でも沢山の情報発信をされております。

・Amebaオフィシャル(東田直樹)
・official site(東田直樹)

 

翻訳者のデイヴィッド・ミッチェルさんについて

率直に、こんなにも心打たれる「解説」(「解説にかえて」というタイトルです)を私は読んだことがありませんでした。

イギリスのベストセラー作家でもあるデイヴィッド・ミッチェルさんの類稀なる表現力によって、
私の拙い言葉では表現できない本書の魅力とそのインパクトを、改めて味わうことになります。

ご自身の息子さんが重度の自閉症を抱えるミッチェルさんは、
東田さんの言葉を通じて「まるで息子が語りかけているように感じた」と述べ、
本書が息子との関係における大きな転換点となったと記載されております。

 

「自閉症の僕が跳びはねる理由」感想

私の好きな言葉で、作家のブレイディみかこさんが

著書『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の中でご紹介されている

「他者の靴を履く」という表現があります。

英語の「To put yourself in someone’s shoes」という定型表現の訳です。

意味としては「相手の立場に立って物事を考える」こと。

本書ではこの諺をご紹介し、エンパシーの重要性が述べられています。

 

シンパシーは「かわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人々に対して人間が抱く感情」、つまり「感情的状態」ですが、エンパシーは「自分がその人の立場だったらどうだろうと想像することによって誰かの感情や経験を分かち合う能力」、つまり「知的作業であり、それができる能力」。「アビリティ(能力)」とはっきり英英辞典に書いてある。

引用:考える人「ブレイディみかこ×金原瑞人 「他人の靴」で常識を飛び越えろ!第2回 「他人の靴」を履くために」

 

今まで自閉症の方々の靴を履こうとしても、

どんな靴なのか?どんな靴の履き心地なのか?想像することも難しかった。

しかし本著で東出さんがその靴について説明してくださったことで、

私たちは少し想像することが可能になった。

 

読んだ後、私はエンパシーの能力が少し向上したように思えるのです。